2007年08月29日

DARK TRANQUILLITY [Fiction]

B000OLG5DQFiction
Dark Tranquillity
Century Media 2007-04-23

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メロディック・デスメタルはメタル・ミュージックの中心ではないが昨今のメタルがメタルらしさを取り戻す上で大きな推進力となったといえます。その中心的な役割を果たしたのがIN FLAMESやARCH ENEMYといったバンドで、その陰に隠れながらも現在のメタルシーンに大きく貢献したDARK TRANQUILLITYの通算8枚目のアルバムです。今もっとも脂ののりきったバンドの作品だけにそのクオリティーは高く個々の楽曲の水準も総じて高くブレを感じさせません。サウンドもさらに向上し主役となる楽器(ヴォーカル含む)にスポットを当てるミキシングがさらにメロディーを強調する印象を強めています。前作を気に入った方なら必ず本作も気に入る事は間違いないでしょう。
前にも述べたかもしれませんが、私はミカエル・スタンネというヴォーカリストの持つ個性・カリスマ性を気に入っており、今回もかれから放たれる孤高の叫びと充実のギターワークに支えられた楽曲が満載の内容となっています。楽曲の求心力をサウンド面から今回さらに大きく貢献しているのがマーティン・ブランドストローム(Key)のキーボードです。SOiLWORKやSCAR SYMMETRY等今では多くのバンドがデスメタルにキーボードサウンドを取り入れていますが、サウンドの隙間を埋めるだけになっていて何らメロディーやアレンジ面で貢献することが出来ない“その他大勢”と違うのはセンスの良さとメロディーメイカーとしての才能が深化した結果と言えるのではないでしょうか。いじり過ぎず簡単にやることで轟音の中でも耳を惹きつけながら、ヴォーカルでやってしまったらメロウになりすぎてしまうであろう印象的なメロディーをドライなサウンドで代弁しています。
DARK TRANQUILLITYにはこれまで、とてもヘヴィなアルバム、メロウなアルバムなど、それぞれの時代に異なる印象を与え一時期多くのファンが離れた時期がありましたが、[Damage Done][Character]では自らの立ち位置を明確にしてアグレッションを取り戻し、そして本作[Fiction]では今までの彼らの集大成とも言える多様性に富んだ内容をファンに拒否反応を与える事なく自然にやってしまう術に長けたバンドへと成長したと感じました。久々のクリーンヴォイスを使った(8)Misery's Crownや女性ヴォーカルを導入した(10)The Mundane And The Magicなどが本作の中に上手く溶け込み、本作の重要な曲になっているのが何より成熟の証と言えるのではないでしょうか。

(3)Terminus (Where Death Is Most Alive)(9)Foucus Shiftが聴けます。

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2007年08月20日

再開します。

ここ2ヶ月ほど公私ともに忙しく毎日のあれやこれに忙殺されていて音楽に触れてはいてもまともに文章に出来る状態では無かったためお休みを頂いておりました。そんな状況にもかかわらずここを訪れていただいた方達には残念な思いをさせてしまったかもしれません。ここでお詫びとお礼を言っておきたいと思います。

私もこの中断の間、音楽を聴いていなかったわけではないのですが、皆さんは春から続く新作ラッシュをどう乗り切ったのでしょうか?これからしばらくは私が迷った末に買ったCDの中から良いと思った作品の紹介が続きます。皆さんが買うか迷っているものがあれば参考にしていただいて、買ったCDがあればご自身の意見とどう違うかなどを楽しんでいただければと思います。
では、早速最初の1枚はこれ。

B000MTFEVOぶっ生き返す
マキシマム ザ ホルモン マキシマムザ亮君
バップ 2007-03-14

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英語圏ではない日本国内の音楽シーンは適度に洋楽の影響を受けつつも、日本独自のJポップ(要するに芸能界)シーンという大きなマーケットがあるためかロックの世界でもその殆どがJポップシーンを念頭に置いたバンドが殆どで、そうした理由から海外でそのまま通用するバンドというのは極めて限られたバンドと言うことができるでしょう。洋楽としてのロックがちゃんと根付いているのに海外マーケットに挑戦するバンドは全くそれに比例していないという残念な状況が続いています。しかしここに紹介するマキシマム ザ ホルモンはそのJポップシーンと海外マーケットの両方を行き来出来そうな希有なバンドの一つでしょう。

攻撃的なヘヴィロックと前のめりなパンクの荒々しさに男性×2、女性×1の3声ヴォーカルが絡み、スクリームからポップなメロディーヴォーカルまで様々な声を駆使してコアなサウンドでありながら極端なまでにキャッチーな楽曲が彼らの持ち味です。洋楽ロックを中心に聴いている私には所々SYSTEM OF A DOWN的だなと思わせるところがあり、ヘヴィなギターとポップなメロディーの組み合わせという意味では初期THE WILDHEARTSを思い出したりもします。作品を重ねる毎に音の塊をぶつけるかのような重量感とその周りを飛び跳ねるかのようなキャッチーさは極端な形でデフォルメされており、その融合が楽曲の印象をタフでありながら超ポップという彼らの個性を完全に確立するに至りました。
その役割が段々大きくなってきたナヲ(Dr)の歌う超ポップな歌メロが普段ロックとは縁遠いリスナーの耳を惹き付け、いつの間にか怒号のようなギターサウンドにも免疫を持たせてしまうような“逃れられない”魅力を放ち始めたといって良いでしょう。邦楽とナメずに多くの人に聴いてほしい作品です。

(2)絶望ビリーは彼らにしてはカッコつけすぎだが、新たなファンを呼び込む強烈なキラーチューンになっている。
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2007年06月27日

THE USED [Lies For The Liars]

B000O76P9Oライズ・フォー・ライアーズ
ザ・ユーズド
ワーナーミュージック・ジャパン 2007-05-23

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前作に伴う活動後、THE USEDはドラマーの交代を経験しバンド内の空気を一新し、これからのバンドの方向性についても色々と悩んだ事でしょう。“スクリーモ”バブルはすでに崩壊しつつあるからです。しかしトレンドの盛衰によって消えてしまうバンドでないことはこのアルバムが証明したといって良いでしょう。もともとこのシーンのバンドの中でも楽曲クオリティー、ライブパフォーマンス、シンガーの歌唱力とカリスマ性といった点で多くのバンドの上に立つ彼らなのでいったんバンドのクリエイティビティーに火が付けば外野の我々が心配する必要なんてなかったのでしょう。
本作に伴うインタヴューを見ると今までの繰り返しはしたくなかった・・・などの発言が目立ちますが、私が思うにTHE USEDの楽曲として新機軸と感じることはありませんでした。どの曲もとてもTHE USEDらしいサウンドとメロディーに満ちていてとても良いアルバムだというのが率直な感想です。バートのスクリームの量が前作にも増して少なくなっていてほんの味付け程度にしか出てこない事に物足りないと思うファンもいるかもしれませんが、そんなことは多くの人にとってはどうでもいいことでしょう。
私には前作[In Love and Death]は幾分内省的すぎると今でも思っていますが、本作に収録された楽曲の多くはダイナミズム、発散されるエネルギー、メロディーの親しみやすさの点でTHE USEDをより多くのリスナーにアピールする出来になっていると思います。
そして本作に(8)Wake The Deadのような曲を発見出来たことを素直に喜びたいと思います。1stアルバムで我々の度肝を抜いたあの激と美の振り幅の激しい楽曲が最高の形で収まっており、ライブ感、グルーヴ感を増した前半部から一変して中間部の美しく瑞々しいパートを挟んでの激しいブレイクパートまでのアレンジはTHE USEDが自分たちを失うことなく成長してきた証しと言えるのではないでしょうか。他にもシアトリカルでダイナミズム溢れる(3)The Bird And The Wormや彼らのポップセンスを濃縮させた(7)With Me Tonight、ファーストアルバム収録の名曲On My Ownに肉薄する美しいバラード(11)Smother Meなど聴き所が多く、毎日聴いていると日替わりで色々な楽曲を好きになるアルバムです。

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2007年06月13日

LINKIN PARK [Minutes To Midnight]

B000O76PR6ミニッツ・トゥ・ミッドナイト
リンキン・パーク
ワーナーミュージック・ジャパン 2007-05-16

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オリジナルフルアルバムとしては[Meteora]以来4年ぶりとなるLINKIN PARKの[Minutes To Midnight]はかねてからの噂通り劇的なスタイルの変化を伴った意欲作となっています。今までの彼らは良い音楽とは何か?を自分たちなりに考える時、作り込みの中で鮮やかなテクスチャーを求める傾向にあり、1曲には膨大な情報量が納められ殆ど隙間がない音楽、といった印象でしたが、同じ事を繰り返したくないという自分自身への新たな可能性という飢餓感に後押しされた結果、サウンド構築する上での“引き算すること”を身につけたLINKIN PARKは雄大に広がる“これから”の大きな可能性と前2作に対する強烈な郷愁感が渦巻く作品となりました。
劇的な変化と言いましたが、それはあくまでサウンドの話。彼らが得意としてきたマイナーキーを主体とした印象深いメロディーの数々は今回も変わらず魅力的です。マイク・シノダのラップヴォーカルの大幅な減少、数曲を除いて殆ど取り除かれたノイジーなギターリフやジョー・ハーンのスクラッチなど、彼らが世に出て来た時ラップメタルなどと呼ばれた要素は減退しハイブリッド感はほとんど感じられません。一方でオーバーダブを少なくし各楽器がどんな演奏をしているのかを明確にして今まで以上にヴォーカルメロディーを表に出した空間的なアレンジはハイブリッド感どころかロックであるという型にすら制限されない開放感に満たされています。
プロデューサーがリック・ルービンということで沢山曲を書くよう即された結果ここまで異なるヴァイヴを持った楽曲が揃ったのだろうと予想出来ますが、本人達が“前作までのスタイルの可能性はもう全てやり尽くした”という通り足枷が外れたかのようにバラエティー豊かな楽曲が揃い、型がはっきりしていたバンドだけに曲によってはあまりの飛躍ぶりにこれがLINKIN PARKのアルバムであると自分に認識させるのが困難なものもありました。ファーストシングルとなった(6)What I've Doneも第一印象は“地味”でしたが、アルバムの中で聴くとまた違った魅力を発散しており、どちらかと言うと金太郎飴的な印象があった今までの彼らの楽曲と比べるとアルバム・オリエンテッドになりそれぞれの曲がそこに収まるべき説得力を持っているように思います。

しかし、気まぐれな音楽シーンの中でも良質の楽曲という意味ではこれまでと変わらず高いクオリティーで存在感を示していますが、果たして前作、前々作を気に入っている1500万人のファンのうちどれだけの人がこの変化に共鳴出来るのかについては疑問が残ります。楽曲の力にかかっていると簡単に言うことは出来ますが、アルバム[Hybrid Theory]に12,3才で出会った人がいるとしたら、彼はまだ20才そこそこの若者なわけで、今回のアルバムの楽曲全てを気に入る聴き手としての懐の深さの有無や前作と全然違うという期待を裏切られた失望感によって本作をあるがままに受け入れられない力が働くということもあるでしょう。まだまだ聴き手の心の中で成長するアルバムだと思うので私の現時点での印象はこんな感じに留めておきます。今の私のお気に入りは(3)Leave Out All The Rest(5)Shadow Of The Day(6)What I've Done(12)The Little Things Give You Awayです。
1年後は本作がどう成長しているかを楽しみにしていたいと思います。


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2007年05月27日

WITHIN TEMPTATION [The Heart Of Everything]

B000NDFIYWザ・ハート・オブ・エヴリシング
ウィズイン・テンプテーション キース・カピュート
ロードランナー・ジャパン 2007-04-11

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名作[The Silent Force]が大きな成功を収めたゴシック・メタルバンドWITHIN TEMPTATIONの通算4作目にあたる[The Heart Of Everything]は曲の良さ、サウンド、そしてこのバンドの要である女性ヴォーカル、シャロン・デン・アデルの歌唱(メロディーの美しさ、表現力の増幅)の全てが前作を上回る出来映えで、正直前作を上回るのは無理なのでは?と個人的に感じていただけに本作の見事な完成度の高さにはただ驚嘆するばかりです。
前作[The Silent Force]は飛躍的に向上した楽曲アレンジと美しいメロディー、シャロンの天使のような透明感ある歌声が素晴らしく、ほぼ全編にわたって導入されているストリングスのアレンジの豪華さも手伝い、メタルでありながらクラシック音楽と同様の優雅さをも表現した、まさにゴシックメタルの新たな最高到達点としてWITHIN TEMPTATIONの隆盛を示したアルバムでした。NIGHTWISHを剛とするならばこのWITHIN TEMPTATIONは柔であり、その特徴は優雅な美しさ、優しさなどある種包容感を感じさせるもので、それを意識してか尖ったギターリフや必要以上のギターソロなどは極力抑えてストリングスアレンジの繊細さとシャロンのシルクのようなヴォーカルを全面に押し出すというスタイルが顕著となりました。

本作はそんな大成功した前作を超えると信じて制作したメンバーの自信と余裕が感じられるような、さらなるクオリティーの向上を追求したことが如実に感じられる成熟度と探求心に溢れています。前作からの変化といえばアルバム全体としてバラエティーに富んでいる事でしょう。[The Silent Force]と比べてみると同じような曲調、サウンド・プロダクションだったのに対して本作はヘヴィでテンポが早い曲(といってもツーバスドコドコってほどの曲はありません)から空気の振動すら伝わってくるようなスローで崇高な曲まで揃え、曲毎、部分毎にサウンドプロダクション(ストリングスアレンジのオン/オフやギターサウンドをわざと荒くするなど)を微妙に変え、シャロンの歌声も前作以上に幅広い声を使い天使のような歌声に加えて、同じ女性の声とは思えないような低く邪悪な声(あの天使声に慣れているだけにその効果は予想以上に大きい)を披露し、聴き手の感情曲線は今まで以上に大きな起伏を味わうことが出来ます。ここまで人間の声が一つの楽器としてその音色やトーンに心地よさを感じさせ、息継ぎすら歌の一部として必要不可欠であると思わせるのは現代のロック/メタルの世界ではシャロンが唯一の存在かもしれません。いや、これほど人の心を動かす歌唱を聴かせるのは広い音楽シーンを見渡しても数少ない一人かも知れません。
アルバムはドラマティックな(1)The Howlingから(5)The Heart of Everythingを聴き終わるころには新たな名作であることを確信する高水準の楽曲で埋め尽くされています。パンチのある(2)What Have You Done、WITHIN TEMPTATIONの何たるかが詰まっている(4)Our Solemn Hour、超音波のようなファルセットが聴ける(7)The Cross
、アルバムのラストを飾る号泣必至の珠玉のバラード(11)Forgiven...各曲の個性が際立っている分アルバムとしての流れの良さやトータルバランスが整っており前作[The Silent Force]以上の“力”を感じます。
美しい歌声という人間にとっての普遍の魅力をこれまで以上に上手く活かす方法を手に入れたバンドは、まだロック/メタルの世界でしか浸透していないその存在をより幅広い層に広めるでしょう。
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2007年05月16日

ALL THAT REMAINS [The Fall Of Ideals]

B000FVBLEIThe Fall of Ideals
All That Remains
Razor & Tie/Prosthetic 2006-07-11

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元SHADOWS FALLのヴォーカリスト、フィリップ・ラボンテ率いるメロディック・デスメタルバンドALL THAT REMAINSの通算3作目にあたる作品の国内盤がやっと発売となりました(本国では昨年発売済)。 SHADOWS FALLは昨今のメロデスやメタルコアブームの先端に躍り出た、いわば現代メタルシーンを代表するバンドとなった訳ですが、そこから脱退しこうして素晴らしいバンドに成長した彼らを本当に頼もしいと思わせてくれる会心の出来となっています。
細かく刻まれるテクニカルなギターリフ、IRON MAIDENの影響を十分に感じさせるハーモニーや流麗なギターソロ、それをリードする手数足数の多いドラム、フィリップの迫力ある咆哮と今回大幅に増やしたメロディック・ヴォーカルなど今どきのメロデスのスタイルを踏襲しているものの、その質は間違いなくその界隈のトップ集団に割って入る水準を誇り、例えば、KILLSWITCH ENGAGEにはなぜギターソロがないんだ?と感じるリスナーやSHADOWS FALLのやや繊細さに欠けたラフなイメージがちょっと・・・という人にはこのALL THAT REMAINSこそツボとなるでしょう。どれもよいバンドですがそうした細かい違いがラボンテ自身のSHADOWS FALL脱退理由とのことなので、自らの道を追求した結果が本作の良い結果と2つのバンドとの明確な差別化を生み出していると言うことが出来るでしょう。
楽曲はどれも攻撃的でスピーディー、スクリームの種類も豊富でそのパフォーマンスはデスメタル以外のブラックメタルなどからのインスピレーションも感じさせ、そこに今回KILLSWITCH ENGAGEにも負けないメロディーヴォーカルをたっぷり組み込み、恐ろしくブルータルでありながらキャッチーなメロディー(ヴォーカルとギター)が何とも言えない整合性と突き抜ける高揚感を生み出し、また1曲1曲がコンパクトであることも手伝ってとても中毒性の高いアルバムになっています。ラボンテのメロディーヴォーカルはSTAINDのアーロン・ルイス(本人も影響を受けたと語っている)よりは線が細いものの声質自体は高い声も難なく使いこなしていて、今後の音楽性が広がった時に大きなアドバンテージになるものと思われます。
最近のメタル隆盛は北欧のメロディック・デスメタルの世界的な認知とハードコア系バンドのメタル化によってかなりアンダーグラウンドなポジションからの盛り上がりで成り立っている部分を多く含みます。今後はこうした動きによりさらなる浮上を目指すバンド達によってより大衆化(ポップ化)を狙った方向へと流れて行く事が予想されますが、同種バンドの大増殖の中、楽曲クオリティーで勝負出来る強みを持っているALL THAT REMAINSはそうした流れの中でも頑固なメタルの一線を踏み越えない芯の強さを感じる事が出来、とても心強い。

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2007年05月08日

THERION [Gothic Kabbalah]

therion-gothickabbalah.jpgゴシック・カバラ
セリオン
トイズファクトリー 2007-01-24

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何もかもがエクストリームな方向に向かいかけていたロック/メタルのシーンにメロディの重要性(ギターの重要性も含む)が戻ってきたのはここ3〜4年のこと。そんな中このTHERIONもメタルの本来の姿を再確認するような世界的な“揺り戻し”の動きが少なからず影響したかのような新作を発表し、クラシカル路線変更以降かつて無い程の正統派メタルの勇壮なメロディーを取り戻し、試み続けたクラシック音楽との融合が絶妙なバランスで組み合わさった傑作となりました。
前作からその兆候があったとはいえ、近作でのクラシカルなアレンジへの傾倒ぶりはメロディック・スピードメタル勢とは異なるメタル的要素をどんどん削ぎ落としたものとなっていき、アルバム[Secret Of The Runes]では殆ど通常のヴォーカルのない荘厳なクワイアが全体を支配していました。しかし本作には前作に引き続き参加したマッツ・レヴィンの他“あの”スノーウィー・ショウも含め4人ものヴォーカリストを迎え入れ、男声女声、硬軟等を使い分けたヘヴィメタルらしいシアトリカルで叙情的なヴォーカルラインが全編を支配しています。以前のクラシック音楽との“融合”が本作のサウンドを見つけるためのものであったかのようなTHERIONにとっての完全なネクストレベルへの到達を果たしました。デスメタルバンドとしてスタートした事を考えるとその音楽性の成熟度も驚異的な進化と言えるでしょう。
前作と同様に2枚組で1曲あたりのパーツも多いことから、1度聴いただけだと味覚を伴わない満腹感に見舞われる人もいるでしょうが、聴き込む度にまるでトリックアートを見ているかのようにヴォーカルメロディーに絡みつく流麗なギターやクワイヤ、オーケストレーションなどが違った視点を次々に生み出す味わい深い作品であり、ますますTHERIONの世界に引きずり込む魔力を増した、そんな印象のアルバムです。私の中では早くも今年のベストアルバム候補として聴き込みアルバムになっています。

今回参加した4人のヴォーカリストはそれぞれの個性を生かした素晴らしい歌唱を披露していますが(引き続き参加した やマッツ・レヴィンもいい仕事をしている)、特筆すべきはKING DIAMONDやDREAM EVILのドラマーとして有名なスノーウィー・ショウのヴォーカルでしょうか。本作のメタルの本道を聴き手に意識させる邪悪でエキセントリックでありながら素晴らしい歌唱力に裏打ちされた彼のパフォーマンスは本作の中でも一際大きなシンボルとして異彩を放っています。正直、本作によって彼はドラマーとしてよりもヴォーカリストとして自信を付け、自らがフロントに立つバンドを始めるべきだと意識するかもしれません。いずれにしても今回のヴォーカリストの起用は大成功であり、本作の持っているメタルオペラ的発想を具現化する上での大変重要な役割を果たしいます。相次ぐメンバー交代やヴォーカル起用法をみてももはやパーマネントなバンドという形態にこだわっていないと思われるTHERIONですが今回はクリスティアン(g)の技術と情感を伴ったギターソロがとても素晴らしく曲の飛翔感をさらに高めています。
きめ細やかな構成力に富んだアレンジや欧州産メロディック・パワーメタルが好まれる日本ではこれまで過小評価されたきたTHERIONが今まで以上に評価される機会がやっと訪れたような気がします。今年のLOUD PARKに呼ぶべきです。
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2007年04月23日

RAINTIME [FLIES&LIES]

raintime-fliesandlies.jpgフライズ・アンド・ライズ
レインタイム
徳間ジャパンコミュニケーションズ 2007-03-21

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イタリア産メタルバンドの2ndアルバムです。予想以上の成長を見せてくれました。インタビュー等で本人達も公言している通り、獰猛なデスメタルと正統派メタルのエッセンスを上手く取り入れ、キーボードを使った煌びやかなアレンジとデスヴォーカルとメロディックヴォーカルを使い分けるスタイルはCHILDREN OF BODOMの弟分といった印象ですが、DREAM THEATERやSTRATVARIUSなどの影響も垣間見え、デスメタルのブルータリティーよりもアレンジの多彩さやメロディーの際だちで曲の魅力を高めているため、聴き疲れすることなくアルバム全編楽しめます。ヴォーカリストのクラウディオ・コアシンは今では同系統のバンドの誰もがやっているデスヴォーカルとメロディックヴォーカルを使い分けるスタイルをかなり高次元で行っており、元SKID ROW のセバスチャン・バックのように聴こえる部分があるかと思えば、STRATVARIUSのティモ・コティペルトのように聴こえる時もあり(デス声も1stに比べると随分迫力を増している)、この器用さに経験が加わればなかなか面白い存在になるのではないかと思います。CHILDREN OF BODOMの尖鋭性にヨーロッパのバンド特有の憂いを含んだメロディーが全面に押し出され、その暴虐性と聴きやすいポップセンスがとてもバランスよく溶け合っています。TRIVIUMなどもそうですが、彼らのような若いバンドの多くは北欧メロディック・デスメタル以降の影響しか受けておらず、おそらくこれからそれ以前のスラッシュメタルやニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル以降の純粋な意味でのヘヴィメタルの要素を自身の中でどのように咀嚼してくかが成長の大きな鍵になると思われますが音楽理論を学んだメンバーがいるだけに今後もそつなく成長する事が期待されます。
まだこの1曲というものはありませんが全体的なレベルの高さ(本当に捨て曲はないです)で見事にアルバム全体の集中力を保っています。(2)Rolling ChancesにLiquid Tension ExperimentのAcid Rainが出てくるのはご愛敬。(8)はマイケル・ジャクソンのあのBeat Itのカバーですがライブの定番にしても良いくらいにとてもいい出来だと思います。


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2007年04月21日

NW-A808

B000O2TL5ESONY ウォークマン Aシリーズ ビデオ対応 8GB バイオレット NW-A808 V
ソニー 2007-03-21

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ロックのみならず音楽好きを自認する人ならば音楽を携帯するということにも少なからずこだわりがあるでしょう。私もカセットテープのウォークマンから始まり、CD、MDと移り変わり現在はSONY製デジタル・オーディオ・プレイヤーを使用するようになりました。そして今回新しくSONYから発売された[NW-A808]を購入したところとても素晴らしい出来だったので紹介してみようと思います。
携帯音楽プレイヤーはPC接続を前提としたHDDタイプやメモリタイプが台頭するまではSONYやケンウッドのMDプレイヤーが主流だったと記憶していますがアップル社が発売したiPodの爆発的な成功により日常の音楽との付き合い方までもが変わる大きな節目を迎えました。大容量のメモリにPCに貯めた曲を何百曲、何千曲と転送でき、何を聴くか迷うという状況を引き起こし便利な反面、ますますリスナーの耳を長く引き付けておくことが難しい時代になりました。
ところで私はこれまで一度もiPodを購入したことはありません。理由はやはり音です。それまでのMDプレイヤーの音に慣れている耳にはあの低音が歪み、高音が突き刺さるようなサウンドは大きなマイナスポイントでした。そんな私が最近まで使用していたのはSONY製のNW-A1000という機種でSONYらしい洗練されたデザインで、やっとMP3プレイヤーに本腰を入れたかと思わせるものでしたが、PCからの転送ソフトがそれまで改良を重ねて作り上げたSonicstageから新たに作成されたConnect playerに変わったことで未成熟なソフトウェアの欠点をこれでもかと言わんばかりに露呈し、同時にレスポンスの悪いボタン操作、SONY製とは思えないバッテリー駆動時間などなど急いで出した感が否めないというのが使ってみての正直な感想でした。
今回私が購入した新しいウォークマンAシリーズの[NW-A808]は2インチのカラー液晶、高画質ビデオ再生機能、大幅な音質向上を実現した4つのクリアオーディオ・テクノロジーなど大幅な改良により初めて先を行くiPodに比肩するハードになったとの印象です。
まず製品が収まっている箱自体がとても小さい!本体は店頭でモックアップに触れてわかっていたとはいえあまりの小ささ、薄さに度肝を抜かれます。

g.jpg携帯と比較2.jpgA1000r.jpg
小ささが伝わりますか?最初に手にしたときのインパクトは大!右端の写真はNW-A1000との比較です。

早速PCに繋いで転送ソフトSonicstage CPで楽曲を転送してみるとNW-A1000よりも若干転送に時間がかかる印象。4つのクリアオーディオ・テクノロジーのうちの3つ、圧縮音源の高音域を補完する[DSEE]、ステレオの左右の音の混在を抑制する[クリアステレオ]、歪むことなく低音をブーストする[クリアベース]をそれぞれONにして(クリアベースは+3まで設定できる。私はもちろん+3)まずは付属のカナル型(耳栓型)ヘッドフォン(4つ目のクリアオーディオ・テクノロジー)で聴いてみる。さらに5バンドのイコライザを好みに調整すると……今まで聴き慣れた曲が明らかに鮮明さを増し音像に広がりが感じられます。
CRCU.jpg
これまで聴き込んだ楽曲でもいままでは聴き取れなかった音が聴こえ、とても新鮮な気分になります。付属のヘッドフォンはこのウォークマン用にチューンアップしてあるのか満遍なく低音から高音までとてもよく響きます。例えば電車など移動中の雑音の中でも、RAMMSTEINの[Mutter]アルバムを聴いていると(3)Sonneではアイン…ヅヴァイ…ドライ…のカウントするティルの迫力ある声がはっきりと聴き取れるし、(10)Adiosの冒頭に電子ノイズのような高音が流れていることすらはっきり聴こえます。
さらにはKORNの[See You on The Other Side]アルバムの(1)Twisted Transistorではイントロの鼓動のようなSEから曲が始まるまでの全てノイズがハッキリ聴こえ、どこかの部族の儀式のような掛け声が迫ってくる部分も頭の中をぐるぐるまわりながら冒頭のギターリフにつながるまでがとても鮮明に聴こえます。
ヘッドフォンを普段私が使用しているゼンハイザーのPMX-200に替えてみるとあまり音質に変化がありません。たしかにPMX-200の方がより音像に広がりを感じることが出来、低音も若干PMX-200の方が出ますが、高音に関してはより密閉度の高い付属のヘッドフォンの方がいいように思いました。正直ここまで遜色ないものが付属しているということに驚いてしまいます。カナル型ヘッドフォンに抵抗がないという人であればわざわざヘッドフォンを別に買わなくても十分にこのウォークマンの音質を堪能出来るレベルでしょう。また全てのボタン操作に対するレスポンスがとても早くサクサク操作出来るのはNW-A1000を使用していた私にはとても大きな満足感を得られるものでした。
そしてウォークマンという名前のもとで初めて実現したビデオ再生機能ですが2インチのディスプレイは非常に高精彩で秒間30コマで映し出される映像は期待以上に滑らかでとてもきめ細かいという印象です。

rfI?@.jpgrfI?@2.jpg
RAMMSTEINのライブ映像から。予想以上の滑らかさ、鮮やかさです。


映像をウォークマンに転送するためには今のところImage Converter というSonicstage CP以外のアプリケーションを使わなければなりませんが(いずれSonicstage CPで映像も転送出来るようになって欲しいですね)、DivXなどのファイル形式でもImage Converterが変換してウォークマンに転送してくれるので難しい操作は全くありません。変換にかかる時間はパソコンのスペックによっても違うのでしょうが1時間40分の映像(700MB、DivXファイルからMPEG-4 AVC(H.264) Baseline Profileへの変換含む)で30〜40分かかりました。変換や転送にかかる時間を考えると頻繁にビデオ映像の出し入れはしたくありませんが2インチ画面に映し出される映像は予想以上に良いものでした。
ちなみにバッテリー持続時間は往復3時間の通勤を使い続けても(音楽再生のみ)1週間持ちました。NW-A1000に比べれば倍以上のスタミナです。
使用してみてのトータルな評価としては
・音質の良さ
・レスポンスの良さ
・バッテリー持続時間の長さ
などがこれまで使ってきた携帯音楽プレイヤーの中でも最もクオリティーの高いと言い切れる点で、
・デザインを含めた所有物としての満足感
・ビデオ再生機能の予想外の出来のよさ、鮮明さ
が付加価値として他の携帯音楽プレイヤーとの差別化のポイントとなるでしょう。
私自身もこのウォークマンを購入してから新譜で純粋に音の良さを実感するばかりではなく旧作を良い音で聴き直すという楽しみも出来ました。本当に満足感の高いプレイヤーで、音楽好きな方なら迷わずこの音質を選ぶでしょう。SONYの底力を久々に見たような気がしました。

ただひとつ、直接ウォークマンに関係ありませんが同時に発売されたネックストラップは購入して大失敗だったと言わざるを得ません。この商品は首の後ろに長さ調節を兼ねたプラスチック製の接合部があるのですが使用しているうちに緩くなり、あっという間に使い物にならなくなってしまいます。私の場合、頻繁に接合部を取り外ししてしないにもかかわらず2週間程で使用不能になってしまいました。アクセサリーについては純正品以外の物が出てくるかも気になるところです。


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2007年04月08日

ANTHEM [Immortal]

B000GIWNTCイモータル
ANTHEM 柴田直人
ビクターエンタテインメント 2006-08-30

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日本のメタル界を背負って立つバンドのひとつ、ANTHEMが放つ最新作。坂本英三シフトになってから充実作を連発するバンドの勢いは止まらず、ANTHEMの長い歴史を見渡しても本作の充実ぶりはベストのひとつと言っても良い素晴らしい出来です。メンバーの特徴が十分に発揮されながらその全てをANTHEMというパッケージに収めてしまうバンドの頭脳である柴田の作曲、アレンジ能力の高さに改めて感嘆しつつも、この才能に対する過小評価は洋楽ロックファンの食わず嫌いの暗い象徴として浮き彫りになります。
メロディーを丁寧に歌っているにも関わらず咆えているような男気溢れる坂本のヴォーカルは過去最高のパフォーマンスと言える出来で、その日本人らしいきめ細やかで少々ウェットな歌メロの充実度の高さと相まって最初から最後まで一気に聴かせるコンパクトさと十分な聴き応えを絶妙なバランス感覚で備えており、ハードロックとヘヴィメタルの間を行き来する“ジャパニーズ・メタル”特有の柔軟さも聴きやすさを増幅させています。
(1)IMMORTAL BIND(2)SOUL MOTORのような鋼鉄ANTHEMと(3)MOB GROOVE(10)ECHOES IN THE DARKのような叙情的なメロディーを前面に出した楽曲の数々はどれもが素晴らしいクオリティーで前編通して全く隙がありません。
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