![]() | Winger Winger Atlantic 1990-10-25 by G-Tools |
なんと解散から10年以上経って再結成し、新作[W]を発表するWINGERの記念すべきデビュー・アルバムです。WINGERは90年代に入ってグランジ・オルタナティブ時代に突入するまでに輝いた最後のバンドのひとつです。彼らがデビューするころはすでに80年代のハードロック・ヘヴィメタルのムーブメントは飽和状態に近づきつつありましたが、WINGERのデビューは実力派ミュージシャンが集まり、華やかなルックスと成熟した楽曲、RATTのプロデューサーとして有名なボー・ヒルのプロデュースということで期待の新人として紹介されました。テクニカルな演奏でありながら親しみやすく耳を惹きつけるアレンジの巧みさ、シリアスな曲もパーティー・ソングも徹底してメロディーの判り易さを前面に出すソング・ライティングは新人バンドのアルバムとしては驚異的な完成度でした。
本作からのセカンド・カットとなった(3)SeventeenがMTVから火が付き、しっかりしたライブも評判になりそこから雪だるま式にアルバム・セールスは伸びていきました。この曲に加えて、パワー・バラードでありながらバンドのミュージシャンシップが大いに発揮された壮大な(10)Headed For A Heartbreakがシングルとして大成功し、ライブ活動も大物バンド(KISS、SCORPIONSなど)の前座を勝ち取り、アルバムのセールスはいつの間にか200万枚に到達しました。(3)Seventeenや(8)Poison Angelなどは一聴するとポップなパーティーソングですが、とても複雑なリフとリズムによって構成されていて、ライブでのレブ・ビーチ(g)の指の動きやロッド・モーゲンステイン(Dr)の満面の笑顔での超絶テクニックはその他のLAメタル勢とは明らかに一線を画していました。当時ポップなハードロックを好んで聴いていた私に間接的により複雑な音楽(プログレッシブ・ロック)への興味を持たせてくれたのはこのWINGERのライブだったといっても過言ではありません。そのWINGERの才能の中心にいたのがキップ・ウィンガー(Vo、b)ですが、天性のルックスと洗練された身のこなしからポーザー扱いを受けたり、本当は楽器を弾いてないんじゃないか、などと色々言われましたが、音楽理論を学んだ彼の作るメロディーラインはポップであっても何か気高さを感じさせるような独特なもので、この1stアルバムでも(2)Hungry、(10)Headed For A Heartbreakなどに顕著に感じ取れます。
彼らの場合2ndも3rdも素晴らしいですが、個人的は80年代的ゴージャスさとWINGERの魅力が一体になった作品という意味で本作が一番気に入っています。新作[W]からWINGERを知った方には本作の煌びやかなサウンドにまた違った印象を持たれるでしょう。