2007年09月30日

Amorphis [Silent Waters]

B000TGQDZ6Silent Waters
Amorphis
Nuclear Blast 2007-09-18

by G-Tools


“今現在の自分の知恵や経験を持ったまま若い頃に戻れたらどんなに良いだろうか”人は皆1度はそんな事を考えたことがあるのではないでしょうか?Amorphisはどうやら自らの音楽でその夢を実現してしまったかのようだ。
前作[Eclipse]は私にとって文句なしの傑作でした。Amorphisの過去の絶頂期のフィーリングを取り戻し(主に3rd[Elegy]が引き合いに出された)、SENTENCEDの遺伝子が埋め込まれたようなヘヴィネスと悲哀の結晶のような楽曲に、新加入のヴォーカル、トミ・ヨーツセンの地鳴りのような咆哮とエモーショナルなクリーンヴォイスという素材が大きな求心力となってSENTENCEDの終焉で大きな虚無感に満たされていた私の心に手を差し伸べられたような錯覚を覚えたアルバムでした。通算8作目にあたる[Silent Waters]はその傑作[Eclipse]と双子のようなアルバムで、今回の楽曲も新たな絶頂期であることを確信させるクオリティーを誇っています。
まさに復活作となった[Eclipse]は[Elegy]や[Tales From The Thousand Lakes]でAmorphisに狂喜したファンはもちろんのこと、彼らを知らなかった新しいメタルファンからも大いに注目を集め、バンドをシーンの第一線に押し戻す成功を収めました。傑作というのは、何回も繰り返し繰り返し聴かれ、人それぞれが思い入れと愛情を持っているため、その次の作品というのはどんなに良いアルバムであってもその内容を正当に評価することが難しいものです。
しかし本作は内容的にもサウンド的にも前作を引き継いでいるものになっており、楽曲のクオリティーも前作に負けないものだと感じました。微妙な変化と言えるのは前作はアルバム[Elegy]と比べられるべき内容でしたが、本作が持つアグレッションはどちらかというと[Tales From The Thousand Lakes]のそれであるということです。そこに[Tuonela][Am Universum]等を経た経験値が絶妙にミックスされ過去の焼き直しではないAmorphisの“いま”を伝えるサウンドになっているのだと思います。
トミ・ヨーツセンの才能は本作でさらにバンドの長所となって大きく成長しており、定評のあったデス・グロウル系ヴォーカルと感情豊かなメロディーヴォーカルのメリハリは巧みさを増して、特に悲哀に満ちたメロディーヴォーカルでの表現力はより安定感と繊細さを増しました。(3)Silent Waters(5)I Of Crimson Blood(10)Black River等はそうした特徴がよく出た楽曲でポップな質感すら感じるメロディーの柔らかさと憂いに満ちた感情がトミのヴォーカルに乗って聴き手に伝わってきます。しかし本作で聴き手を最も熱くさせるのは(2)A Servant(4)Towards And Againstのようなヘヴィーチューンでしょう。前作で得た経験値を土台に、より攻撃的な躍動感に満ちた楽曲は前作にはなかったものです。現在の自分たちの個性に磨きをかけながら過去のキャリアのエッセンスを注入する余裕と冷静さが光る作風はバンド史上最高傑作である[Eclipse]に確かな成長の跡を上積みした結果であり、新たに始まった彼らの絶頂期を確かなものとする安定感を感じさせます。
音楽シーン全体で見ればまだまだアンダーグラウンドな存在の彼らに本作で初めて出会った方はぜひ前作[Eclipse]も聴いていただきたい。

試聴する((1)Weaving The Incantation(6)Her Alone(8)Shamanと(3)Silent WatersのPVが観られます。)
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2007年09月28日

DREAM THEATER [Systematic Chaos]

B000PFUAO6Systematic Chaos
Dream Theater
Roadrunner Records 2007-06-05

by G-Tools


DREAM THEATERはこれまで彼らがやってきた音楽、すなわちプログレッシヴ・ロックへのあこがれを自らが直接受けたヘヴィーメタルの影響を他人に真似できないレベルで融合させることによって生まれる、唯一無二のプログレッシヴ・メタルを生み出し、もはやベテランとしてシーンに確固たる地位を確立し未だに大きくなり続け、メンバーチェンジやメンバー個人のミュージシャンとしての飛躍、私生活の変化などを糧としながら多くの名作を生んできました。
長年在籍したメジャーレーベルからインディーでメタル系に強くメジャー級の配給力を持つRoadrunner Recordsへと移籍し新しい章の始まりと位置づけた彼らにとっての9作目が発売になりました。大作傾向、コンセプチュアルな前作と比べると1曲1曲が独立した比較的シンプルにまとまった本作ですが、これまでの彼らを応援してきたファンへの気持ちと新しい出発に際し貪欲に自らをアピールする2面が交差する充実の内容となっています。
前作はそこかしこに隠されたグランド・コンセプトと多様でメロディーに長けた楽曲、それを表現者としてまた一歩前進したジェイムズ・ラブリエのヴォーカルの素晴らしさによって元々高水準のアルバムばかりの彼らの作品の中でも特別な1枚となった作品でした。とりわけアルバム・タイトルトラックの「Octavarium」は今まで全ての時代のDREAM THEATERに通ずるドアのような、それでいて今後の彼らの曲作りの指針となるべき曲で、今も聴くたびに新たな発見があり、曲が成長し続けているような感覚に捕らわれる奥深い1曲としてDREAM THEATERの歴史に加わった名曲でした。
本作はコンセプトアルバムではなく1曲が独立した世界を持つ楽曲が並んでいます。(1)In The Presence Of Enemies Pt.1(8)In The Presence Of Enemies Pt.2だけがタイトルからもわかる通り元々25分あった大作を二つに分けオープニングとエンディングに配置することでアルバム全体のイメージすら決定づける役割を持つ重要な曲となっており、前作の「Octavarium」の壮大さとはひと味違ったメタリックでダークな世界観を提示しています。ラブリエのヴォーカルは計算され尽くした歌メロの中で繊細さと邪悪でダーティーな声音を上手く使い分けていて、アルバム[Awake]時に試みて上手くいっていなかった声質のポップさを補完する威厳を手に入れたようです。ダークな雰囲気(アルバム全編そうだが)ながら本作の中で一番ポップな曲とも言える(2)Forsaken、アルバム[Train of Thought]に入っていてもおかしくない攻撃的なリフで押しまくるMETALLICAソング(3)Constant Motions、本作でのジョン・ペトルーシ(g)の一番のギターソロが聴ける(5)Repentance、痛烈なメッセージを含む歌詞とQUEENのようなアイデアを活かしたライブ映えしそうな(6)Prophets Of War、(1)(8)に負けず劣らずエピックでメロディアスな(7)The Ministry Of Lost Souls等どれも強力なインストゥルメンタルとラブリエの本領が発揮された楽曲です。
メロウな曲はあっても暖かみや優しさ、希望、明るさといった暖色系のメロディーは殆ど皆無でどんな場面でも光を遮るダークなメロディーが支配しているのが本作の特徴でしょうか。それでも灰色に沈んだ暗いイメージに陥らないのはジェイムズ・ラブリエの色彩豊かなヴォーカルラインとジョン・ペトルーシ(g)、ジョーダン・ルーデス(key)等によるメロディーの洪水のごとき演奏によるところが大きいでしょう。アルバムを何度も何度も聴き込む事によって、楽曲の中で何が行われているか発見していく楽しみは本作でも尽きることはありません。

ファンの方はもうご存じとは思いますが、本作[Systematic Chaos]に伴うジャパン・ツアーは現在のところ武道館1回限り(しかも平日!)と発表されました。このクラスのバンドが武道館とはいえ1回公演など言語道断。必ず近いうちに戻ってきてもらいましょう。

試聴する(本作からは特にヘヴィーな2曲(3)Constant Motion(4)The Dark Eternal Nightの試聴が可能です。)
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2007年09月15日

MEGADETH [United Abominations]

B000OCXFCOUnited Abominations
Megadeth
Roadrunner 2007-05-15

by G-Tools


MEGADETHの前作[System Has Failed]は復活MEGADETHのアルバムとしてとてもいいアルバムでした。しかしデイヴ・ムステインが認める通りMEGADETHの活動停止後ソロアルバムの為に書いたアイデアや楽曲が多かった事、ムステイン以外セッション・ミュージシャンだった事(MEGADETHファミリーの一人、クリス・ポーランドがゲスト参加)が影響したのか、活動停止前の迷走期2作[Risk][The World Needs A Hero]に入ってもおかしくないような曲調もありましたが、曲そのものの出来は[Risk]とは比べものにならないくらい高く、私の印象では[Criptic Writings]と80年代のMEGADETHの要素を足したような印象でした。
新しいMEGADETHが予想以上にうまくいっていると公言していたムステインは今のバンドによる作品を形にするべく、明らかに[System Has Failed]よりよ良いアルバムが出来るとやる気を見せていたように思います。そうして出来上がった本作はムステインの自信に満ちた不敵な笑みが浮かんでくるようなClassic MEGADETHと、どんどん上達する歌唱を生かしたメロディーラインが絶妙な仕上がりとなりました。[System Has Failed]に比べれば明らかにヘヴィでムステインのヴォーカルも80年代の彼にあったトゲが(歌詞も含めて)復活しているように思います。MEGADETHの楽曲に不可欠だといえるキレが戻ったことも本作を際だたせている要因でしょう。パーソナリティーの強烈さでは、ニック・メンツァやマーティー・フリードマンがいた時代に及びませんが、ドローヴァー兄弟と元WHITE LIONのジェイムズ・ロメンゾを加えた現在の布陣はMEGADETHの音楽を体現し、ムステインが気持ちよく活動する上でとても良い関係を築いている事が音からも伝わってきます。

最初のシングルにまで登り詰めた(8)A Tout Le Monde (Set Me Free)は[YOUTHANASIA]収録のファンにはお馴染みの曲ですが、LACUNA COILのクリスティーナ・スカビアとのデュエットが実現した今回のヴァージョンは以前に馴染んだものよりも良い出来であるという事は特筆に値するでしょう。私はこういうケースでオリジナルを上回るヴァージョンというのはなかなか経験したことがないので(WHITESNAKEのCrying in the RainとHere I Go Againくらいだ)、リメイクは大成功だと思います。他にも新たなアンセムの誕生と言える(2)Washington Is Next!ムステインとグレンのギターの掛け合いで二人の個性が浮き上がる(7)Play For Blood、[So Far So Good...So What]や[Rust In Peace]に入っていてもおかしくない(1)Sleepwalkerなど我々が好きだと思うMEGADETHサウンドが詰まっています。新機軸はないけれどこのジャンルのオリジネイターの一角としていまだ衰えない威厳を取り戻した充実作と言えるでしょう。

スカビア嬢とのデュエットPVが見られます。
posted by replicant at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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