2007年05月27日

WITHIN TEMPTATION [The Heart Of Everything]

B000NDFIYWザ・ハート・オブ・エヴリシング
ウィズイン・テンプテーション キース・カピュート
ロードランナー・ジャパン 2007-04-11

by G-Tools



名作[The Silent Force]が大きな成功を収めたゴシック・メタルバンドWITHIN TEMPTATIONの通算4作目にあたる[The Heart Of Everything]は曲の良さ、サウンド、そしてこのバンドの要である女性ヴォーカル、シャロン・デン・アデルの歌唱(メロディーの美しさ、表現力の増幅)の全てが前作を上回る出来映えで、正直前作を上回るのは無理なのでは?と個人的に感じていただけに本作の見事な完成度の高さにはただ驚嘆するばかりです。
前作[The Silent Force]は飛躍的に向上した楽曲アレンジと美しいメロディー、シャロンの天使のような透明感ある歌声が素晴らしく、ほぼ全編にわたって導入されているストリングスのアレンジの豪華さも手伝い、メタルでありながらクラシック音楽と同様の優雅さをも表現した、まさにゴシックメタルの新たな最高到達点としてWITHIN TEMPTATIONの隆盛を示したアルバムでした。NIGHTWISHを剛とするならばこのWITHIN TEMPTATIONは柔であり、その特徴は優雅な美しさ、優しさなどある種包容感を感じさせるもので、それを意識してか尖ったギターリフや必要以上のギターソロなどは極力抑えてストリングスアレンジの繊細さとシャロンのシルクのようなヴォーカルを全面に押し出すというスタイルが顕著となりました。

本作はそんな大成功した前作を超えると信じて制作したメンバーの自信と余裕が感じられるような、さらなるクオリティーの向上を追求したことが如実に感じられる成熟度と探求心に溢れています。前作からの変化といえばアルバム全体としてバラエティーに富んでいる事でしょう。[The Silent Force]と比べてみると同じような曲調、サウンド・プロダクションだったのに対して本作はヘヴィでテンポが早い曲(といってもツーバスドコドコってほどの曲はありません)から空気の振動すら伝わってくるようなスローで崇高な曲まで揃え、曲毎、部分毎にサウンドプロダクション(ストリングスアレンジのオン/オフやギターサウンドをわざと荒くするなど)を微妙に変え、シャロンの歌声も前作以上に幅広い声を使い天使のような歌声に加えて、同じ女性の声とは思えないような低く邪悪な声(あの天使声に慣れているだけにその効果は予想以上に大きい)を披露し、聴き手の感情曲線は今まで以上に大きな起伏を味わうことが出来ます。ここまで人間の声が一つの楽器としてその音色やトーンに心地よさを感じさせ、息継ぎすら歌の一部として必要不可欠であると思わせるのは現代のロック/メタルの世界ではシャロンが唯一の存在かもしれません。いや、これほど人の心を動かす歌唱を聴かせるのは広い音楽シーンを見渡しても数少ない一人かも知れません。
アルバムはドラマティックな(1)The Howlingから(5)The Heart of Everythingを聴き終わるころには新たな名作であることを確信する高水準の楽曲で埋め尽くされています。パンチのある(2)What Have You Done、WITHIN TEMPTATIONの何たるかが詰まっている(4)Our Solemn Hour、超音波のようなファルセットが聴ける(7)The Cross
、アルバムのラストを飾る号泣必至の珠玉のバラード(11)Forgiven...各曲の個性が際立っている分アルバムとしての流れの良さやトータルバランスが整っており前作[The Silent Force]以上の“力”を感じます。
美しい歌声という人間にとっての普遍の魅力をこれまで以上に上手く活かす方法を手に入れたバンドは、まだロック/メタルの世界でしか浸透していないその存在をより幅広い層に広めるでしょう。
posted by replicant at 03:21| Comment(0) | TrackBack(1) | music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月16日

ALL THAT REMAINS [The Fall Of Ideals]

B000FVBLEIThe Fall of Ideals
All That Remains
Razor & Tie/Prosthetic 2006-07-11

by G-Tools


元SHADOWS FALLのヴォーカリスト、フィリップ・ラボンテ率いるメロディック・デスメタルバンドALL THAT REMAINSの通算3作目にあたる作品の国内盤がやっと発売となりました(本国では昨年発売済)。 SHADOWS FALLは昨今のメロデスやメタルコアブームの先端に躍り出た、いわば現代メタルシーンを代表するバンドとなった訳ですが、そこから脱退しこうして素晴らしいバンドに成長した彼らを本当に頼もしいと思わせてくれる会心の出来となっています。
細かく刻まれるテクニカルなギターリフ、IRON MAIDENの影響を十分に感じさせるハーモニーや流麗なギターソロ、それをリードする手数足数の多いドラム、フィリップの迫力ある咆哮と今回大幅に増やしたメロディック・ヴォーカルなど今どきのメロデスのスタイルを踏襲しているものの、その質は間違いなくその界隈のトップ集団に割って入る水準を誇り、例えば、KILLSWITCH ENGAGEにはなぜギターソロがないんだ?と感じるリスナーやSHADOWS FALLのやや繊細さに欠けたラフなイメージがちょっと・・・という人にはこのALL THAT REMAINSこそツボとなるでしょう。どれもよいバンドですがそうした細かい違いがラボンテ自身のSHADOWS FALL脱退理由とのことなので、自らの道を追求した結果が本作の良い結果と2つのバンドとの明確な差別化を生み出していると言うことが出来るでしょう。
楽曲はどれも攻撃的でスピーディー、スクリームの種類も豊富でそのパフォーマンスはデスメタル以外のブラックメタルなどからのインスピレーションも感じさせ、そこに今回KILLSWITCH ENGAGEにも負けないメロディーヴォーカルをたっぷり組み込み、恐ろしくブルータルでありながらキャッチーなメロディー(ヴォーカルとギター)が何とも言えない整合性と突き抜ける高揚感を生み出し、また1曲1曲がコンパクトであることも手伝ってとても中毒性の高いアルバムになっています。ラボンテのメロディーヴォーカルはSTAINDのアーロン・ルイス(本人も影響を受けたと語っている)よりは線が細いものの声質自体は高い声も難なく使いこなしていて、今後の音楽性が広がった時に大きなアドバンテージになるものと思われます。
最近のメタル隆盛は北欧のメロディック・デスメタルの世界的な認知とハードコア系バンドのメタル化によってかなりアンダーグラウンドなポジションからの盛り上がりで成り立っている部分を多く含みます。今後はこうした動きによりさらなる浮上を目指すバンド達によってより大衆化(ポップ化)を狙った方向へと流れて行く事が予想されますが、同種バンドの大増殖の中、楽曲クオリティーで勝負出来る強みを持っているALL THAT REMAINSはそうした流れの中でも頑固なメタルの一線を踏み越えない芯の強さを感じる事が出来、とても心強い。

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2007年05月08日

THERION [Gothic Kabbalah]

therion-gothickabbalah.jpgゴシック・カバラ
セリオン
トイズファクトリー 2007-01-24

by G-Tools


何もかもがエクストリームな方向に向かいかけていたロック/メタルのシーンにメロディの重要性(ギターの重要性も含む)が戻ってきたのはここ3〜4年のこと。そんな中このTHERIONもメタルの本来の姿を再確認するような世界的な“揺り戻し”の動きが少なからず影響したかのような新作を発表し、クラシカル路線変更以降かつて無い程の正統派メタルの勇壮なメロディーを取り戻し、試み続けたクラシック音楽との融合が絶妙なバランスで組み合わさった傑作となりました。
前作からその兆候があったとはいえ、近作でのクラシカルなアレンジへの傾倒ぶりはメロディック・スピードメタル勢とは異なるメタル的要素をどんどん削ぎ落としたものとなっていき、アルバム[Secret Of The Runes]では殆ど通常のヴォーカルのない荘厳なクワイアが全体を支配していました。しかし本作には前作に引き続き参加したマッツ・レヴィンの他“あの”スノーウィー・ショウも含め4人ものヴォーカリストを迎え入れ、男声女声、硬軟等を使い分けたヘヴィメタルらしいシアトリカルで叙情的なヴォーカルラインが全編を支配しています。以前のクラシック音楽との“融合”が本作のサウンドを見つけるためのものであったかのようなTHERIONにとっての完全なネクストレベルへの到達を果たしました。デスメタルバンドとしてスタートした事を考えるとその音楽性の成熟度も驚異的な進化と言えるでしょう。
前作と同様に2枚組で1曲あたりのパーツも多いことから、1度聴いただけだと味覚を伴わない満腹感に見舞われる人もいるでしょうが、聴き込む度にまるでトリックアートを見ているかのようにヴォーカルメロディーに絡みつく流麗なギターやクワイヤ、オーケストレーションなどが違った視点を次々に生み出す味わい深い作品であり、ますますTHERIONの世界に引きずり込む魔力を増した、そんな印象のアルバムです。私の中では早くも今年のベストアルバム候補として聴き込みアルバムになっています。

今回参加した4人のヴォーカリストはそれぞれの個性を生かした素晴らしい歌唱を披露していますが(引き続き参加した やマッツ・レヴィンもいい仕事をしている)、特筆すべきはKING DIAMONDやDREAM EVILのドラマーとして有名なスノーウィー・ショウのヴォーカルでしょうか。本作のメタルの本道を聴き手に意識させる邪悪でエキセントリックでありながら素晴らしい歌唱力に裏打ちされた彼のパフォーマンスは本作の中でも一際大きなシンボルとして異彩を放っています。正直、本作によって彼はドラマーとしてよりもヴォーカリストとして自信を付け、自らがフロントに立つバンドを始めるべきだと意識するかもしれません。いずれにしても今回のヴォーカリストの起用は大成功であり、本作の持っているメタルオペラ的発想を具現化する上での大変重要な役割を果たしいます。相次ぐメンバー交代やヴォーカル起用法をみてももはやパーマネントなバンドという形態にこだわっていないと思われるTHERIONですが今回はクリスティアン(g)の技術と情感を伴ったギターソロがとても素晴らしく曲の飛翔感をさらに高めています。
きめ細やかな構成力に富んだアレンジや欧州産メロディック・パワーメタルが好まれる日本ではこれまで過小評価されたきたTHERIONが今まで以上に評価される機会がやっと訪れたような気がします。今年のLOUD PARKに呼ぶべきです。
posted by replicant at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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