2006年12月24日

POISONBLACK [Lust Stained Despair]

B000H3064ALust Stained Despair
Poisonblack
Century Media 2006-09-04

by G-Tools

SENTENCED存命時にサイドプロジェクトとして存在したヴィレ・レイヒアラのPOISON BLACKが彼の新しいライフワークとなり、通産2枚目のアルバムをリリースしました。1stアルバムではヴィレはギタリストでしたが本作では1stアルバムで歌っていJ.P.レパルオトがの脱退によりヴィレがヴォーカルを兼務しています。本作を聴いて思うことはSENTENCEDはやはりSENTENCEDであったということでしょう。現在、ヨーロッパに広く蔓延するゴシックメタルなるものはSENTENCEDやPARADISE LOST等のバンドによってその下地が作られ、その後数多くのバンド達にその型が様々な解釈で受け継がれ、特にヨーロッパではひとつのジャンルとしてしっかりとシーンに根付いていますが、彼らが別格とも言える存在感を発していたのは、ゴシックメタルたる暗く冷たい様式美に80年代のヘヴィメタルにあった細やかな構築美、叙情性を導入することによって生まれる激しさ、重さとエモーショナルなメロディーの劇的な融合に言及することが出来るのではないかと思います。特に遺作となった[The Funeral Arbum](2005)ではメタル的ダイナミズムとゴシックの持つ耽美的な美しさと彼ら特有の激情が高次元に融合し、このスタイルにおけるひとつの最終形を提示しました。そのヴィレがいるにも関わらずこのPOISON BLACKはSCNTENCEDとは基本的に異質のものであると感じます。もともとSENTENCEDはガッチガチのデスメタルバンドとしてスタートしているので、そこには最初からメタル特有の早く複雑なリフがありバンドの最終形に至るまでにもそうした伝統的なメタルの要素に溢れていたのに対して、本作にてヴィレが弾くギターにはそういったメタル様式の影響が薄い感じがします。どちらかというとHIMが実践しているような、初期ブラックサバスから影響を受けた90年代のヘヴィロック的な音圧を重視したようなものが目立ちます。よって繊細なアレンジと絶望感を想起させるメロディーで劇的なメランコリズムを表現する方向性は同じでもSENTENCEDがメタルに軸足を置いているとするならば、POISON BLACKはヘヴィロック的な質感が含まれていると感じました。もちろんSENTENCEDにはミカ・テンクラ(g)とサミ・ロパッカ(g)という作曲担当のメンバーが他にいたのでそこが一番の違いを生み出しているのは当たり前ですが、ヴィレが歌っていることで薄まるギャップは想像以上に大きいし、それだけの特徴を持ったヴォーカリストということなのでしょう。
このアルバムは我々がPOISON BLACKに対して(ヴィレに対して)期待するものをかなり忠実に提供してくれています。SENTENCEDが宿していた独特の“冷気”のようなものは薄れ、逆に“慟哭”と呼ぶに相応しいヴィレの煮えたぎるようなヴォーカルを中心に据えたドラマティックで強烈なフックを持った曲が多くPOISON BLACKとしての個性を確立しています。
しかし冒頭にも述べたようにSENTENCEDを失った喪失感が癒されることはありませんが、少なくともそのDNAを受け継ぎつつ転生したバンドの作品として素晴らしいアルバムですし、逆にHIMなどを聴くファンが始めてこの名前を聴いたのならぜひ聴いていただきたいとお勧め出来るものです。

試聴する(4曲目のRushのVideoが見られます)
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2006年12月10日

Killswitch Engage [As Daylight Dies]

B000J103KMAs Daylight Dies
Killswitch Engage
Roadrunner 2006-11-21

by G-Tools

ヘヴィーメタルという狭義な音楽ジャンルの中にも様々な方向性やトレンドがあり、その中でKillswitch Engageは今最前線を走るバンドのひとつとして認識され、本作によってメタルミュージックそのものを牽引する存在に大きくステップアップしようとしています。彼らやSHADOWS FALLが新しいメタルとしてアメリカ国内で認知され“メタルコア”や“MAメタル”という言葉がもてはやされる様になったのは、彼らがハードコアバンド出身メンバーによって結成され、ハードコアのエッジを持ち込んだメタルナンバーを評して使われるようになったのが起源ではないかと思います。初期のサウンドこそそういったハイブリッド感が漂っていたものの今ではすっかりメタルバンド以外の何者でもありません。そのクオリティーは本作でも上昇するいっぽうのようで、叩き上げのライブバンドとしての自信・余裕と自分たちがやっていることに対する確信に後押しされた楽曲はもはやアンダーグラウンドな世界を超越し、メタルバンドとしては異例とも言えるほどのメジャー感を漂わせています。
脳内を巨大なブルドーザーで蹂躙されるような圧倒的な殺傷力を備えたギターリフはさらにへヴィーにキレ味鋭くなっているように感じますが、ギターリフ自体が放つメロディー感が異常なまでにキャッチーで耳を捕らえて離さず、その上に乗るハワード・ジョーンズのヴォーカルはさらにインテンスに、よりロマンティックに聴くものの感情を揺さぶります。前作のような判りやすい1曲があるわけではないのに、前作以上に聴きやすく感じるのはこうしたライブでの大合唱を意識したアレンジの増量とそれを可能にしたハワードの七色のスクリームとスクリーム以上に“魂”を感じるメロディーヴォーカル、そして前作以上に増したアダム(g)のライヴでのキレコミカルなパフォーマンスからは想像しがたいクールなメロディーヴォーカルなどによって曲単体の出来が飛躍的に向上したことによるアルバム全体のクオリティーの向上が要因でしょう。シングル曲(5)My Curseに限らず、どの曲にもライブで大合唱確定の素晴らしいメロディーがあり、そのどれもが安っぽいポップなものにはなっておらず、もはやKILLSWITCHしか創造出来ない壮大でエレガントな雰囲気が醸しだされています。初めて聴く方には(5)My Curseや一際ドラマティックな(3)The Arms Of Sorrowがお勧めですが、個人的に本作で一番と感じたのは(9)Break The Silenceです。現在のバンドのポテンシャル全てを出し切ったような重厚壮大なギターに強烈なスクリームと勇壮なメロディーを最良の形で聴かせるアレンジは見事で、疲弊した社会に対して自己の覚醒を即す歌詞も素晴らしい内容で、曲の3分過ぎの静寂の後のハワードの絶叫には鳥肌モノです。他には(10)Desperate Timesの今までの彼らになかったようなDEFTONES風のエピックな手法も新鮮です。

興味深いのは、先ごろリリースされたTRIVIUMのニューアルバムとの比較です。20歳そこそこと若いメンバー構成のTRIVIUMは自らの愛する音楽に対するルーツの探究を楽曲作りに投影させ、自らの血肉としてバンドの方向性を変化させているのに対して、Killswitch Engageは自ら起こした灯火を大きな炎へと堅持、そして昇華させることでARCH ENEMY風IN FLAMES風といった北欧デスメタルからの脱却(もともと彼らのサウンドは北欧勢とはギターリフもメロディーの質も違ったが)と自分たちのサウンドを完全に唯一無二のものへと深化させることに成功しています。どちらも今後のメタル界に大きな影響を与えるバンドだけにこの方向性の進化と深化の違いは今後ふたつのバンドをどう位置付けていくのかという点で非常に興味深く楽しみでもあります。

試聴する(今ならDIOのカバーが聴けます。やるな!ハワード笑)
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2006年12月03日

SUGARCULT [Lights Out]

B000G5S704ライツ・アウト
シュガーカルト
カッティング・エッジ 2006-08-30

by G-Tools


通算3作目となったSUGARCULTの新作[Lights Out]はパワー・ポップ、ポップ・パンクと呼ばれた1stアルバムのころから又さらに右肩上がりの成長曲線を描き、メンバーの人間としての成長、価値観の成熟などが歌詞や音作りに表れ、いつもながら胸をしめつける様なメロディーと非凡なポップセンスで埋め尽くされた充実の3rdアルバムとなっています。デビューアルバム[Start Static]当時からパワーポップ系でありながら他の同系バンドの“勢いまかせ”的な雰囲気のない肩の力の抜けたスマートな楽曲が印象的な彼らでしたが、アルバムを重ねる毎に良いメロディーはそのままに深みを増して、より幅広い意味でのロックバンドとなりました。
本作を聴いて最初に気付くのは曲の良さもさることながらヴォーカルのティムの表現者としての大きな成長でしょう。少々しわ枯れた声が彼の魅力ではありましたが、声音自体に感情表現がよりダイレクトに伝わるようになり新たな楽器がひとつ加わったような新鮮さすら感じます。(7)Made A
Mistakeなどは今までの彼の歌唱にはなかった“生々しさ”や“ソウル”が感じられ、説得力という点ではこれまでと違う深みが感じられる一因となっています。
楽曲は、例えるならGREENDAYの[AMERICAN IDIOT]の愁いに満ちた側面を彼らの持つポップセンスと上手くすり合わせた様な雰囲気とJIMMY EAT WORLDの曲作りの上手さに肉薄する出来を誇り、プロモーション次第では大きな成功に繋がる可能性を感じさせる良質な楽曲が並びます。勢い良く始まる(1)Lights Outからの(2)Dead Living(3)Los Angeles(8)Riotは彼ららしい勢いとメロディーの心地よさを堪能出来る楽曲として歓迎されるだろうし、(4)Do It Aloneや(7)Made A Mistake(10)Shakingは成熟した彼らのしなやかなポップセンスが光っており、前の方が良かったとは決して感じさせない魅力を放射しています。彼らが成長した分だけ、本作でまた新たにファンが増えてくれたら、と思わずにはいられません。

試聴する
posted by replicant at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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