2006年11月23日

ANGRA [Aurora Consurgens]

angra-auroraconsurgens.jpgオーロラ・コンサルジェンス
アングラ
ビクターエンタテインメント 2006-10-25

by G-Tools

彼らにとっての現時点での金字塔とも言うべき前作[Temple Of Shadows]は、彼らがもはやメロディック・スピードメタルの枠に収まりきらない才能を証明し、ANGRA流のプログレッシブ・メタルを提示し誰もが到達出来なかったDREAM THEATERの領域に足を踏み入れた傑作となり、当時世界的ベストセラーとなっていたダン・ブラウン著[ダ・ヴィンチ・コード]のセンセーションとの相乗効果もあり大きな成功を収めました。

膨大な情報量で満たされ、その全てが重要なピースと言えた前作と比べると、本作の製作過程には(BURRN!誌のインタヴューを読む限り)ANGRAファンからするとネガティブに捕らえがちな事実が幾つかあります。
(1)急なアルバム製作によって十分な楽曲が揃わなかったこと。
(2)(1)によって作曲の要であるラファエルの曲がとても少ないこと。(ラファエルは前作に対するプレッシャーからなかなか曲が出来なかったとも告白している)
(3)前作製作時からのエドゥ(Vo)の声帯の状態悪化により高音を抑え、多少ラフな歌唱に変化していること。
などです。
しかし、そうした状況によってANGRAの底力も十分に発揮されています。例えば、
(1)ラファエルに代わってメインソングライター的役割を果たしたキコの楽曲の出来の良さ。
(2)フェリペ(b)が初めて楽曲提供した事実。
(3)シンプルであるがゆえに表出したグルーヴやヘヴィさ、それに馴染むエドゥのブルース・ディッキンソン的ヴォーカルの魅力(Scream Yuor Heart Outは素晴らしい)
などです。
(1)The Course Of Natureは本作を象徴するようなシンプルでありながら今までのANGRAにはあまりなかったグルーヴを感じさせ、(2)The Voice Commanding Youではとても彼ららしいサウンドで安堵感を与え、静と動を行き来し、キコのギターが素晴らしい(3)Ego Painted Grey、エドゥの曲らしいバラード曲(4)Breaking Ties等聴き所が多く、さらには本作の最大のハイライトといえる(6)Window To Nowhere〜(7)So Near Do Farでは起承転結を持ったANGRAらしく音数の多い(6)から素晴らしいメロディーとブラジルのバンドらしい雰囲気で本作の中でも際立った個性を放つ(7)は今後のライブで聴くのが本当に楽しみな楽曲です。前作が傑作であり、本作に我々が期待する壮大なクワイアや疾走するメロディック・チューンはそれほど多くないもののシンプルな(他の凡百のバンドに比べればそれでもかなり複雑だ)バンドサウンドに徹した本作の曲がライブでどのような魅力を発揮するかも大変楽しみではあります。彼らは今回BLIND GUARDIANとダブル・ヘッドライナーという形ではあるもののシート付の渋谷公会堂での公演も実現しました。確実に大きなバンドに成長しつつある彼らに期待したいと思います。
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2006年11月11日

RIOT [Thundersteel]

B0000026JRThundersteel
Riot
Epic 1990-10-25

by G-Tools

TRIVIUMの新作を気に入り、メタルの過去の歴史を振り返ろうという貪欲で勤勉なロックファンは多いと思います。マスターピースとも言えるIRON MAIDENの[Number Of The Beast]、METALLICAの[MASTER OF PUPPETS]、JUDAS PRIESTの[Painkiller]、PANTERAの[Vulgar Display Of Power]などなど挙げればキリが無いですが、そうしたバンドほどの認知は得られなかったRIOTが出した[Thundersteel]は80年代後期のパワーメタルを代表する作品として上記4作品と並べて聴いても聴き劣りしない名作だと思います。RIOTはもともと70年代後半にデビューしているベテランで1st[Rock City]、2nd[Narita]といった名作を残したバンドでリーダーのマーク・リアリ(g)以外はメンバーも流動的で本作でヴォーカルを務めるトニー・ムーアで3代目だか4代目のヴォーカリストとなります。歴代のヴォーカリストとの決定的な違いは無理なく高音が出せる技巧派ということでしょう。
JUDAS PRIEST譲りの正統派ブリティッシュ・ヘヴィメタルの高貴さと当時新たな流れを作り出していたHELLOWEENなどのジャーマンメタル勢の攻撃性やスピードが加味し、そこに無理なくハイトーン・ヴォーカルを決めるトニーのメロディアスな歌メロと泣きのフレーズを連発するマークのギターが高次元で融合する奇跡のパワーメタルが展開され、RIOT史上最も攻撃的でありながら優れたメロディーセンスを失なわないバランス感覚が見事なアルバムと言えるでしょう。
アルバム・タイトル曲(1)ThundersteelはこれまでのRIOTからは想像出来ないようなパワーとスピードに漲っていて、トニーのハイトーンが炸裂する歌メロとの共存は当時聴いていてとても新鮮だったのを憶えています。もはや現代のメタルバンドは出せない威厳に満ちた(3)Sign Of The Crimson Storm、(1)同様にスピード感とメロディーが溶け合う(4)Flight Of The Warrior、DOKKEN等のLAメタルに影響されたかのような、アルバム中最もわかりやすい楽曲(7)Bloodstreets等はこのアルバムで再起を狙っていたであろうマーク・リアリの意気込みを感じる名曲です。
アメリカのバンドでありながらヨーロッパのバンドのような劇的な展開と歌メロを持つRIOTの存在は日本やヨーロッパでは高い人気を獲得しましたが、流動的なメンバー構成や良いマネージメントに出会えなかったことなど才能以外の要因が影響し、現在では“マニアしか知らないバンド”的キャリアに留まっています。
若手バンドが80年代回帰的な作風を押し出し、メタル・シーンが盛り上がっている今だからこそ、彼らのような才能に多くの人に気付いて欲しいと思い取り上げました。
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2006年11月07日

36CRAZYFISTS [A SNOW CAPPED ROMANCE]

36crazyfists-asnowcapped.jpgスノウ・キャップト・ロマンス
36 クレイジーフィスツ
ロードランナー・ジャパン 2004-03-10

by G-Tools


本作はすでに発売されてから2年近く経つアルバムですが、36CRAZYFISTSはアラスカ出身というロックバンドとしては非常に珍しい場所から出てきたバンドで、私もこのアルバムを発見するまでその存在を知りませんでした。その出音はヘヴィロックでありながら、ヴォーカルはスクリームとメロディー・ヴォーカルを使い分けるスクリーモやメタルコアタイプ。そして印象に残るメロディはアラスカ出身のせいかLAやNYのバンドとはどこか一線を画したもので、激しい音像の中にも埋もれない叙情味を感じさせるそのメロディーはアメリカのバンドというよりはどこかヨーロッパの匂いが漂っています。やはりアラスカも寒いところなので、そういった気候の違いが影響しているのかも知れません。
1曲目の(1)At The End Of Augustはこのアルバム、そしてこのバンドを知るうえでとても良いインパクトを与えてくれます。実際私も当時purevolumeで聴くことが出来たこの曲に大きな衝撃を受けてCDを即買いしました。また(3)Bloodwork(5)Skin And Atmosphere(8)Destroy The Map(9)Installing The Catheter等彼ら独自のメロディセンスがよく出た楽曲が多く、どの曲も独立した魅力を放っているのも大きな特徴でしょう。
そうした骨太で攻撃的なギターサウンドとキャッチーな歌メロが目立ちますが、なんといってもヴォーカルのブロック・リンドウの特殊な声質が耳に残ります。ザラついた質感と艶を併せ持つという意味でLINKIN PARKのチェスターに似たタイプですが、前作ではやや神経質気味な歌唱に聴こえた印象を完全に払拭し、ダイナミックなスクリームとそのテンションを持続したまま伸び伸びと歌い上げるメロディックヴォーカルは36CRAZYFISTSの突出した個性へと昇華しています。
ヘヴィロックともスクリーモともメタルコアとも呼べない、言わばそのいいとこ取りなサウンドがもしかしたら唯一のネックとなるかもしれませんが、肝心なのはバンドのスタイルではなく曲の出来そのもので、ヘヴィなサウンドと良いメロディーに中毒という方なら彼らの魅力を存分に楽しめるでしょう。
間もなく発売になる待望のニューアルバムも試聴した限り本作を踏襲した内容のようなので、新作を聴いて気に入った方は本作もぜひお薦めします。

試聴する
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2006年11月04日

WINGER[Winger]

B000002IMLWinger
Winger
Atlantic 1990-10-25

by G-Tools

なんと解散から10年以上経って再結成し、新作[W]を発表するWINGERの記念すべきデビュー・アルバムです。WINGERは90年代に入ってグランジ・オルタナティブ時代に突入するまでに輝いた最後のバンドのひとつです。彼らがデビューするころはすでに80年代のハードロック・ヘヴィメタルのムーブメントは飽和状態に近づきつつありましたが、WINGERのデビューは実力派ミュージシャンが集まり、華やかなルックスと成熟した楽曲、RATTのプロデューサーとして有名なボー・ヒルのプロデュースということで期待の新人として紹介されました。テクニカルな演奏でありながら親しみやすく耳を惹きつけるアレンジの巧みさ、シリアスな曲もパーティー・ソングも徹底してメロディーの判り易さを前面に出すソング・ライティングは新人バンドのアルバムとしては驚異的な完成度でした。
本作からのセカンド・カットとなった(3)SeventeenがMTVから火が付き、しっかりしたライブも評判になりそこから雪だるま式にアルバム・セールスは伸びていきました。この曲に加えて、パワー・バラードでありながらバンドのミュージシャンシップが大いに発揮された壮大な(10)Headed For A Heartbreakがシングルとして大成功し、ライブ活動も大物バンド(KISS、SCORPIONSなど)の前座を勝ち取り、アルバムのセールスはいつの間にか200万枚に到達しました。(3)Seventeenや(8)Poison Angelなどは一聴するとポップなパーティーソングですが、とても複雑なリフとリズムによって構成されていて、ライブでのレブ・ビーチ(g)の指の動きやロッド・モーゲンステイン(Dr)の満面の笑顔での超絶テクニックはその他のLAメタル勢とは明らかに一線を画していました。当時ポップなハードロックを好んで聴いていた私に間接的により複雑な音楽(プログレッシブ・ロック)への興味を持たせてくれたのはこのWINGERのライブだったといっても過言ではありません。そのWINGERの才能の中心にいたのがキップ・ウィンガー(Vo、b)ですが、天性のルックスと洗練された身のこなしからポーザー扱いを受けたり、本当は楽器を弾いてないんじゃないか、などと色々言われましたが、音楽理論を学んだ彼の作るメロディーラインはポップであっても何か気高さを感じさせるような独特なもので、この1stアルバムでも(2)Hungry、(10)Headed For A Heartbreakなどに顕著に感じ取れます。
彼らの場合2ndも3rdも素晴らしいですが、個人的は80年代的ゴージャスさとWINGERの魅力が一体になった作品という意味で本作が一番気に入っています。新作[W]からWINGERを知った方には本作の煌びやかなサウンドにまた違った印象を持たれるでしょう。
posted by replicant at 20:32| Comment(0) | TrackBack(1) | music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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