2006年10月25日

TRIVIUM [The Crusade]

trivium-crusade.jpgTHE CRUSADE
トリヴィアム
ロードランナー・ジャパン 2006-10-04

by G-Tools

――TRIVIUMは進歩し続けている。―――
前作[Ascendancy]は北欧メロディック・デスメタルへの憧れをそのまま表現した1stから大きく進化し、“TRIVIUM自身のメタル”へと成長した大出世作となり新世代ヘヴィメタルの旗手と言われる程の評価と成功を手に入れました。デスメタルの獰猛さ、正統派メタル的構築美、キャッチーなヴォーカルによる取っ付きやすさを備えた[Ascendancy]は若いメタルファンには新鮮さと衝撃を与え、長年のメタルファンにはアメリカからこういうバンドが登場したというメタルシーン自体のポジティブな変化を歓迎しました。
そんな彼らの3rdアルバムは当然注目が集まる訳ですが1stから2ndへの過程を上回る飛躍的な成長を遂げています。演奏がタイトでよりテクニカルになったのは前作に伴うツアーの賜物でしょう。叫ぶのを止めたのは彼らの前作発表後からの学習能力(彼らの興味は北欧デスから遡って80年代メタルへと向けられたようだ)やシーンの先を読む洞察力(メタルコア界のその他大勢との差別化)などが影響しているでしょう。
革新的というわけではありませんが、ギターリフの持つ殺傷力(特に顕著なのは80年代ベイエリア・スラッシュのような鋭利で複雑なギターリフの影響)と正統派メタルからデス、スラッシュの様式まで網羅する多彩さが、ただ叫んでいるだけではない“ちゃんと考えられたヴォーカルメロディ”を駆使することで前作以上の深みのある作品になっています。今回大成長したマットのヴォーカルはARCH ENEMYの前座で来日したときは勢い任せでメロディーヴォーカルは結構甘かったですが、そのメロディーセンスを存分に発揮した新曲をライブでどこまで表現出来るのかも見ものです。そして、散々言われていることではありますが、やはりMETALLICA、MEGADETHの影響は作品のあちこちで感じることが出来ます。
前作以上にフューチャーされているギターソロに関してはやや弾き過ぎの感は否めません(メロディーよりもテクニックが優先される場面があり、マイケル・アモットのようにテクニックに裏打ちされた素晴らしいメロディーばかりという訳ない)が、今自分たちがやっていることに対する自信と情熱と勢いをぶつけたような圧倒する力に満ちていて決して曲から浮いていないのも成長した証でしょう。

もはや今の時代にこの[The Crusade]がMETALLICAの[MASTERS OF PUPPETS]のような革新性は求められませんが、あのころの興奮やメタル熱は間違いなくこのアルバムからも発せられています。AVENGED SEVENFOLD、BULLET FOR MY VALENTINE、Killswitch Engageなどとこれからのメタル界を引っ張っていく者として確かな存在感を見せつけた傑作です。聴き逃さないでくださいね。

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2006年10月12日

Saosin [Saosin]

B000HT36QESaosin
Saosin
Capitol 2006-09-26

by G-Tools

SAOSINはこれが1stフル・アルバムとなるカリフォルニア出身の所謂スクリーモ系のバンドです。デビュー前から相当話題になっていたので私もpurevolumeやmyspace等で音を聴いていましたが、このアルバム、予想をはるかに上回る良いで出来です。
“スクリーモ”と呼ばれるカテゴリーはメディアの過剰な取り上げ方や、メジャー/インディー問わずレコード会社のバンドの青田買いによってすでに飽和状態に達しており、そうした音楽性を有するバンドたちは早くも“脱スクリーモ”的なアプローチを取る動きが目立ってきました。しかし、この遅れてきた大型新人はスクリーモの完成形とも言える楽曲クオリティーの高さを示すことで強烈な存在感を放っています。
音楽的にはThe Beautiful Mistakeあたりに近いのだろうと思いますが、SAOSINには絶叫スクリームはありません(EPではスクリームしていましたが)。高音が良く伸びるヴォーカル(前任者脱退時に一時的にSTORY OF THE YEARのフィリップ・スニードがヴォーカルを勤めたそうだが、確かにこの高音は彼以外に歌いこなせる人は少ないだろう)がセンシティブな感性を表現するメロディーは“エモ”そのものですが、余分なスクリームがない分そのメロディーやコーラス・アレンジ(ハワード・ベンソンのプロデュースによる効果大か)も含めて非常によく練られていて、流れるように、しかし同時に一つ一つのメロディーがとても印象的で、ザクザクしたギター(トーンにも特徴がある)や、特徴あるビートを叩き出すドラムとともに光っています。切ないメロディーでありながらその中に希望や温かさ、包容力のようなものを感じさせてくれるポジティブさに満ちたメロディーこそこのバンドがデビュー間もないにも拘らず国内で大きな人気を得ている最大の特徴でしょう。
どの曲にも幾重にも重なるヴォーカル・ハーモニーとコードをかき鳴らすだけに留まらない立体的なギター、手数足数の多いドラムが印象的ですが、あえて幾つか曲を挙げるとすれば(10)You Are Not Aloneでしょうか。やさしいメロディーとスロウなテンポが印象的で、たとえばWAKING ASHLANDが[I Am For You]1曲によってブレイクしたのと同じ効果を予感させるポテンシャルを秘めているのではないでしょうか?アルバムの中でも最も即効性のある曲でしょう。(1)〜(3)のたたみかけるような展開も素晴らしいです。アルバム全体として見ても捨て曲はないのですが、じっくり聴かせるタイプのミディアムナンバーが多い中で(2)Sleepers(3)It's So Simpleのようにロックでタフな曲の魅力が引き立っています。CDショップの試聴機に入っているところもあると思うのでぜひ(1)〜(3)を聴いてもらいたいです。
国内盤の発売がいつになるのか判りませんが、もう少し早く発売されていれば来日するTaste Of Chaos Tour '07の集客にも繋がったんじゃないのか?と考えてしまうくらいの充実の内容です。個人的には今年の新人の中でも突出した印象を持つバンドのひとつです。

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posted by replicant at 22:35| Comment(1) | TrackBack(0) | music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月04日

IRON MAIDEN [A Matter Of Life And Death]

B000H7JD4KA Matter of Life and Death
Iron Maiden
Sanctuary 2006-09-05

by G-Tools

おそらく今年発売になるハードロック/へヴィメタル系アルバムの中でも最も重要なアルバムのひとつ、IRON MAIDENの[A Matter Of Life And Death]が発売になりました。
ブルース・ディッキンソンが再加入して3作目となりましたが、このところの欧米でのバンドに対する追い風を受けてか、とても野心的なアルバムという印象を受けます。おそらくアルバム全体通してここまで密度の濃い、音数の詰まったアルバムはIRON MAIDENの全カタログ中1番ではないでしょうか。
前作[Dance Of Death]は、新生IRON MAIDENのスタートを成功させた前々作[Brave New World]を受けて、よりバラエティーに富んだ個性の強い楽曲を集め、飽きの来ない素晴らしいアルバムでした。
本作はすでに各メディアで“複雑な”とか“プログレッシブ”などと表現されている通り、多くの要素が詰まった複雑でシリアスなアルバムであると思います。1曲1曲のブルースの歌唱のアグレッシブさや歌詞内容のシリアスさ、ギターリフの重さなど、いつものIRON MAIDENの作品よりへヴィだと感じる要素がアルバム全体を支配しています。もともと長めの曲が多いバンドではあるものの、[戦記]という邦題が表すとおりアルバムを通して一貫したトーンがあり、現代の世相を映し出すかのようなダークなムードを感じます。CDのブックレットでは“なぜだか判らないが当初のテンポよりも遅くなっていた”曲をそのほうが重みや威厳といったものを表現出来て良いからという理由でそのままレコーディングされたことも、何となく前のめりな疾走感が感じられない理由でしょう。しかしこのような書き方をしたからと言って否定的なわけではありません。聞き手に集中力を要するという意味で前作のような即効性はありませんが、聴けば聴くほど新たな魅力を発見できる緻密な構成力をまざまざと見せつける曲は実は1曲1曲聴くと最初に感じた“ダーク”といった印象は感じず、いつものIRON MAIDENと同列に並べても一切違和感は感じない曲ばかりです。私自身もこのアルバムを何度となく聴いていますが好きな曲もどんどん変化し(ちなみに私が現時点で1番気に入っているのは(5)The Longest Day)、結局IRON MAIDENは全くブレていないのだ、という結論に至りました。2・3回アルバムを通して聴いたら後は気に入った曲だけ再生したくなるアルバムが乱発される中、IRON MAIDENは常にアルバムをひとつの単位と考え創作してきて、本作でも繰り返し聴きたくなる魅力満載でバンドが迎えた何回目かの全盛期はまだ続くと確信出来るアルバムだと思います。

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posted by replicant at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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